開催日 | 2010年2月12日(金) |
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開催時間 | 2010年2月12日(金) |
場所 | 11:00 - 13:15 |
参加費 | 無料 (交流会2000円) 映像内の長寿メニューとソフトドリンク付き |
募集人数 | 30人 |
募集対象者 | 健康料理にご興味のある方ならどなたでも 調理のできない方も大歓迎 医師、管理栄養士、調理士等プロも歓迎 |
主催 | UDXオープンカレッジ |
共催 | ドクターズキッチン |
ドクターズキッチン
開催の報告
廣常啓一(新産業文化創出研究所 所長)と重森貝崙氏(左) |
広州の一般家庭の食卓を 映像にて紹介 |
原靖シェフによる 調理実演。 映像に出てきた料理を再現 |
広州の家庭料理
「ハタの蒸し料理」 |
豚肩肉のスペアリブを使った
家庭料理も再現 |
試食会の様子 |
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開催の内容
世界の国々には長寿国といわれる地域や民族がいます。また、これまで長寿地域や民族であったのに急激に悪化していたり、短命地域であったのに改善の兆しが見えてきたりすることがあります。こうした地域やその現象にはこの分野の権威である家森幸男先生とWHO(世界保健機構)のフィールルドワークとしての研究調査により科学的な根拠やメカニズムが解明されてきました。そこで解った大きな要素が各地の特徴的な「食事」にありました。
このワークショップで上映したのは、世界各地での検診・調査の実際や、食環境・食生活などを記録したもので、全て家森博士の監修作品です。家森幸男博士は京都大学名誉教授、武庫川女子大学教授、WHO循環器疾患専門委員、わが国でなじみ深い「カスピ海ヨーグルト」の生みの親でもあります。
WHOの世界各地のフィールドワークを映像記録したのが、同行した映像監督の重森貝崙 氏。重森さんがカメラを通して見てきた世界の食事と健康・長寿の関係を、家森先生の解説と合わせて映像を見ながらワークショップと映像に登場する食事の調理実演と解説、試食会、交流会をシリーズで行います。
第2回 2月12日(金)11:00~13:00
映像【広州の食事と健康―変わりゆく中国からのリポート(30分)】
映像でご紹介したのは、広東省の省都・広州。そう、「食は広州に在り」という言葉のとおり、中国で最も食文化のレベルが高い地域として有名です。中国人は世界で最も食いしん坊の民族、といわれていますが、その中でも最も食いしん坊なのが広州の人たち、とされています。その食い気に応えるだけの豊富な食材がこの地には溢れているからです。
とくに、野菜・果物の量と質、そして魚介類の新鮮さ、種類の多さは、お隣の香港と並んで、中国随一といえるでしょう。魚は、淡水魚優勢の中国で、海の魚が美味しい地域です。このような地域特性に恵まれて、食材の持ち味を活かす料理が発達してきました。旨味はタップリ、塩分と香辛料は控え目、アッサリとしてしかも風味の高い名菜が数多く揃っています。
映像では広州郊外の農村と市内の二家族を取材しましたが、それぞれ美味しくて健康に良さそうな料理の数々がテーブルに上っていました。 再現料理は、広州の人たちが大好きな「清蒸石斑魚(チェンチンセッパーンユー)ハタの丸蒸し料理」です。
ファシリテーター:記録映像監督、(社)中日文化研究所理事 重森 貝崙 氏
その他 『映像からみた世界の食事と健康・長寿』ラインナップ とプログラム
◎予防栄養医学・長寿学の泰斗として世界的に有名な家森幸男博士によって、1986年から開始された「WHO・世界の食事と健康」研究。この研究は、世界25ヶ国・61地域に及ぶ大規模なフィールドワークで、食事と健康・長寿の関係に関して、次々と新しい医学・栄養学的研究成果が生まれ、現在も進行中です。
第1回 2010年2月7日 中国広東省梅県 客家の食事と健康
調理実演 家常豆腐 等
第2回 2010年2月12日 中国広東 広州の魚料理
調理実演 はたの蒸し料理
第3回 2010年2月19日 沖縄伝統料理
調理実演 豚と昆布と瓜の煮込み
第4回 2010年2月26日 グルジア・コーカサスの料理
調理実演 牛肉のボイル
第5回 2010年3月9日 スコットランドの短命料理を反面教師に
調理実演 フィッシュ&チップスによる改善メニュー
第6回 2010年3月14日 ブラジルの短命料理を反面教師に
調理実演 フェジョアーダ豆と肉の煮込み)による改善メニュー
【プロフィール】
●重森 貝崙 (しげもりばいろん) 氏
記録映像監督。(社)中日文化研究所理事。
大学卒業後、岩波映画製作所入社、監督、代表取締役を務める。主に世界・中国の食文化について映像演出および研究をしている。「中国の食文化」では電通・映画部門賞など多数受賞。
受賞歴:
「中華人民共和国の農業」で教育映画祭最優秀作品賞(文部大臣賞)受賞
「中国の食文化」で電通・映画部門賞、日本ペンクラブ・外国部門賞受賞
「病む人なき未来へ」で芸術文化振興基金の助成を受ける
●家森 幸男(やもりゆきお) 氏
武庫川女子大学国際健康開発研究所 所長/医学博士
世界の健康長寿食の研究
1937年、京都府生まれ。1967年、京都大学大学院医学研究科博士課程修了。病理学専攻。米国国立医学研究所客員研究員、京都大学医学部助教授、島根医科大学教授、京都大学大学院人間・環境学研究科教授などを歴任。
1983年からWHOの協力を得て世界25カ国61地域を学術調査。
現在、武庫川女子大学国際健康開発研究所所長、京都大学名誉教授、WHO循環器疾患専門委員、財団法人兵庫県健康財団会長、財団法人生産開発科学研究所予防栄養医学研究室長などを兼任している。
主な研究分野:
世界で初めて人間と同じような脳卒中をおこす遺伝子を持ったラットを開発し、たとえ脳卒中の遺伝子があっても、脳卒中が大豆蛋白質、大豆イソフラボンなどで予防出来ることを証明。そこでWHOの協力を得て、20余年をかけて世界25ヵ国61地域で食事と健康・寿命の関係について研究を続け、ついに長寿の栄養源が大豆の成分、蛋白質やイソフラボンなどであることを明らかにした。
長寿食に関する著書も多数。
受賞歴:科学技術庁長官賞、日本脳卒中学会賞、米国心臓学会高血圧賞、日本循環器学会賞、ベルツ賞、杉田玄白賞、紫綬褒章受賞
主な著著:
『大豆は世界を救う』 法研
『110歳まで生きられる!脳と心で楽しむ食生活』 NHK出版
『長寿食世界探検記』 ちくま文庫
『食で作る長寿力』 日経プレミアシリーズ
『長寿の秘訣は食にあり』 マキノ出版
『カスピ海ヨーグルトの真実』 法研
『ついに突きとめた究極の長寿食』 洋泉社
『食べてなおす高血圧』 講談社
『病気にならない食べもの便利帳』 大和書房
ほか多数
2月12日ワークショップ 「広州の食事と健康」レジュメ
○広東省は海南島に次ぐ中国最南端の地域で、その気候は亜熱帯あるいは熱帯性気候に属する。12月から1月にかけて、気温が10度を下回ることもあるが、2月から11月までは暖かい、というよりは暑く感じる月の方が多い。とくに暑いのは5月から9月で、35度を超す日が続く。3月中旬から梅雨に入り、4月いっぱいまでほぼ毎日雨が降る。この季節は湿気が極度に高く、病気にもなりやすい。 しかし、このような高温多湿のおかげでものなりが良く、その食材の豊富さは中国の中でも、屈指の地域といえる。
○広東料理には、珠江沿岸の広州料理、山間丘陵部の客家料理、東の方の海辺の潮州料理の三つの料理系統がある。その中で「食は広州に在り」といわれるように、広東料理といえば広州料理が代表的存在である。本日も広州の食文化を念頭に解説する。広州は南隣りの香港が海の港であるのに対し、大河・珠江沿岸に開かれた河川港で、広東省の省都でもある。
○食在広州、「食は広州に在り」といわれてきたのは何故か。このことわざは今から200年位前の頃から世の中に流布されたらしいが、まず、前述のように極めて食材が豊富であること、これが大前提としてある。 そして、清朝の時代、わが国の長崎と同じく、広州が中国唯一の外国に対して開かれた港であったこと。長崎は、交易相手をオランダと中国に限定していたが、広州は欧米諸国全体に門戸を開いていた。そのため、天下の富が広州に集まった。たとえば余談であるが、政府の認可によって、広州の海外交易を独占していた商社、これは公行(コンホン)と呼ばれたが、その代表的存在である「怡和行」は当時世界一の富豪であったと推測されている。富が集まるところ、料理水準が高くなることは世のならいである。
○広東省の北部は山岳地帯であるが、中部から南部は、珠江という大河のデルタ地帯で、米や野菜、果物を豊富に産する。米は2期作である。野菜は四季を通じて緑黄色野菜、根菜、瓜類が市場に並ぶ。 とくに特徴のある野菜は「菜心」と呼ぶ「芥藍菜」がよく登場する。これは、日本の油菜に近い野菜で、その茎を用いる。緑が鮮やかなので、料理の彩りによく用いられる。 ユニークなのは韮黄、黄ニラである。これは、緑色したニラと全く同じものであるが、何故色が黄色なのか。それは、ニラを栽培するときに素焼きの細長い植木鉢のようなものをニラにかぶせて日光を遮断し、緑色を発色させないようにする。こうして成長したニラは、独特のニラ臭さがなく、むしろ芳香があり、そして柔らかいので珍重される。
○ここは果物王国でもある。オレンジ、パイナップル、パパイヤ、マンゴー、バナナなど、海南島と並んで中国一の種類と生産量を誇る。 ○肉類はどうか。豚肉、鶏、家鴨は当然のこととして、面白いのは牛肉を食べることである。日本の影響で中国人も最近は牛肉を食べるようになってきたが、ここは昔から食べてきた。それは、中国唯一の貿易港として栄えてきた歴史があり、欧米人の食生活の影響を受けたためである。牛肉の付け合せ野菜・クレソンも「西洋菜(サイヨンツォイ)」と呼ばれている。1985年当時の取材では、牛肉は決して美味しくなかった。それは、食肉用に肥育された牛の肉ではなかったからである。撮影した厨房では、赤身の牛肉の塊りをスライスして、白い粉をまぶして揉んでいた。白い色の粉末は重曹で、これで牛肉を柔らかくしていたのである。
○広州はいわゆる生薬、漢方薬の生産地でもあり、集散地でもある。広州の人たちの日常哲学の中には、つねに医食同源があり、薬膳料理も発達している。映像にも出てきたが、農村では、クコの若い葉をスープの材料にするなどは、ごくありふれた食習慣といえる。また、冬瓜の中身をくりぬいて、その中に豚肉、鶏肉、キノコ、海老などの材料を入れ、それに蓮の実や、竜眼の実などを加えてだし汁とともに蒸しあげた「清燉冬瓜?(とうがんの五目詰めスープ蒸し)」なども一種の薬膳スープといえるだろう。
○もう一つ、広州の食文化の中で大切な柱となっているのは、「飲茶」である。飲茶は朝から夕方まで、気が向いたときに食べるという、実に融通無碍な食習慣であるが、茶を喫しながら食べるシュウマイやコメ粉の皮の餃子、さまざまな蒸し羊羹風の?(ガオ)や湯葉巻きなどは非常に洗練された味で美味しい。また北方のような包子や、上海風のような湯包もあり、甘いお菓子の点心も数多くある。 広州の人たちは、一度にドカンと大食しない風習を持ち続けているようで、食べることを何度にも分けて愉しむという考え方なのか、あるいは小柄な人が多い広州人が、一度に大食すると胃腸に負担をかけすぎる、ということで飲茶の風習ができたのか、明らかではない。おそらく両方関係しているのではないか。 なお、お茶を飲むことを、北京語では喝茶という。上海など江南では吃(喫)茶といい、広東語では飲茶という。このうち、喫茶という言葉と、飲むという二つの言葉がわが国に伝わっている。
○広州の料理の特徴は、まず食材が野菜・果物や魚介類など、新鮮なものに恵まれていること、その食材の持ち味を活かすために、塩分や香辛料は控え目にする。油脂の使用も北方の寒い地域に比べれば少ない。しかし、出汁、旨味はしっかりと保持しているという料理が多い。 一方フカヒレやアワビ、ナマコなど乾物料理の調理にも長けている。その延長で言えば、漢方薬を上手く日常の料理体系に取り入れ、特別ではない薬膳料理が家庭内でも登場すること、豚や鶏などの焼きもの料理が発達し、いつでも買って帰って食べられること、毎日のように飲茶を愉しんでいることなど、他の地方では見られない優れた点が多い。 明治以後、わが国にやってきた中国人は広東省の人が多く、その中でも数多くの人たちが、横浜や神戸で調理人になったり、料理店を開いたりした。塩分・香辛料・油脂の使用を抑えた料理は、淡白な料理を好む日本人の口にも合い、日本での中国料理は、広東料理、すなわち広州料理が代表するようになった。
○広州の食事と健康の関係はどうか。広州の人々の健康上、特筆すべきは血圧のすばらしい値で、中国の他の検診地域に比べ、大きな差をつけていた。 その原因は二つある。まず、塩分摂取量が少ないこと。これは、淡白な味わいを尊重する広州の食文化と深い関わりがある。近年の高度経済成長により、広州の農村にも工場が建設されるようになり、農民のライフスタイルにも変化が起きている。その結果、1日6グラムだった食塩摂取量は8グラムに増加した。 しかし、この8グラムというのは、日本の最も食塩摂取量が少ない沖縄と同じである。二つ目は、日常的に魚介類をよく食べている結果、タウリン摂取量が多いこと。タウリンは高血圧を防ぐ効果のあるアミノ酸で、現在では世界各地で、タウリン摂取量の多い地域ほど、心臓死が少ない、即ち長寿地域であるという統計的事実が判明している。 広州の人たちは食事を人生最高の価値とし、食事する楽しみを心の底から謳歌している。これが、広州の健康・長寿に大きくプラスに働いているに違いないと思われる。
「ドクターズキッチン」とは
健康をテーマとした食の番組に紹介された食材がスーパーなどの店頭から一斉になくなることは良く知られています。我々の身近な関心事であり、古くより食と医療、健康に関しては語られてきました。しかし、言い伝えられる食と健康の常識には、大きな間違いや誤解も存在します。特定健康保険食品(トクホ)などの登場に見られるように、これまで科学的根拠(エビデンス)や治験の必要が無かった食にも様々な分野の研究者により研究が進んできました。
食に関しての科学や技術が進歩したことにより、これまで以上に「食と健康」の関係が解明されるようになってきました。治療や予防医療、日々の健康管理の他、美容や介護などに対しても食を活用したソリューションが開発、提案されています。個人の病院での治療・投薬履歴や健康診断などの記録、その他、食事・運動などのバイタルデータなどの健康データ(パーソナルヘルスレコード)に基づく、食事療法や食事指導もその領域となります。
国民の健康や病気予防、高齢化に対しての対策、食糧自給の問題としても「食」に対する期待が高まってきています。医療費の抑制などの考え方などからは病院給食などに対して健康保険により給付される給食の考え方やレセプトの方針が日々、変わりつつあります。
近い将来、病院給食は治療の一環で提供される療養食や嚥下食などを除く、一般食などは健康保険の領域から外れ有償化の方向に進みます。逆に通院患者向けの食事療法などには薬の処方箋同様、食の処方箋がシステム化するようになるでしょう。病院や診療所経営の観点から見ても療養食以外にも健康食としての指導や提供が見直され、ドクターズキッチンレストランなど医師の監修やプロデュースによる食品やレシピ開発、惣菜中食、給食、外食などのサービスが盛んになってきます。
こうした社会インフラを支えるためには医療機関だけでなく、健康サービス産業(フィットネスジムやエステックサロン、マッサージや健康料理教室など)の他、農業などの食の生産や食品加工メーカー、外食や給食、食品スーパーや惣菜販売などの中食などのフードサービス産業、調理などのための厨房産業や調理家電、またパーソナルヘルスレコードのための情報システム産業、健康機器メーカーなど多岐にわたる業界のコラボレーションが重要となってきます。
本ワークショップはこうした新市場に対して新たな製品やサービスを提供するための情報を学び、ビジネス研究や交流により新産業創出を促進します。
プログラムは製品やサービス、ビジネスの企画研究開発の情報、産学官、異業種、川上川下の連携促進を目的とした「イノベーションワークショップ(セミナー)」の「ドクターズキッチン・ビジネスワークショップ」とフードサービス産業や調理士、栄養士、保健士、介護士、医師や医療機関経営者、健康サービス産業者などを対象とした「食と健康医療」を学ぶ「プロフェショナルワークショップ」、一般の方々が食育としてドクターズキッチンレシピなどを学ぶ「オープンワークショップ(セミナー)」の「健康教室」「料理教室」などがあります。
ここでは「ドクターズキッチン・ビジネスワークショップ」として1月末より毎月1~2回程度の開催を下記のテーマなどにより予定しています。各方面の先端的取組や実績のある講師・スピーカーをお招きして新産業文化創出研究所 所長 廣常啓一のファシリテートにより参加者通しの議論も交えプログラムを進めてまいります。
■食による健康・医療のための社会インフラの可能性
■食による医療費軽減と地域産業振興
■診療報酬から外れる入院食(医療制度改正と給食の動き)
■フードサービス産業が乗り出す治療食の供給システム
■パーソナルヘルスレコードとドクターズキッチン
■ドクターズキッチンとIT技術
■次々と研究が進む食の科学と効能
■健康のための調理技術と調理機器とは
■広がる高齢者食、介護食の市場
■メタボ検診の現在の状況
■食事の処方箋システム
■健康経営と食のソリューション
■病院経営改善としてのサービス拡大とドクターズレストラン
■ドクターズレストランとしての病院の取組み
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