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CSRの概念と戦略的活用

■CSR (corporate social responsibility)

環境とCSRはよく結び付けて語られることがあります。環境報告書とCSR報告書を同様に扱ったり専用の紹介ポータルサイトがあったりもします。持続的な社会や企業の持続的発展としても長期のまた地球規模での環境への取組みは重要なものではあります。

しかしCSRは環境に対して特別に絞ったものではなく、また寄付やフィランソロピー、メセナとも異なります。企業の持続的発展と社会的責任が同じものであることは更に望ましいものではあります。

企業の組織活動が社会に与える影響に責任を持ち、ステークホルダーや彼らを取り巻く社会全体からの要求に対して適切な意思決定をすることと、そのためのコンプライアンスや組織形態であること、社会への説明責任と合意形成を得るためのコーポレートコミュニケーションが双方向でなされていることなどが重要となります。

■社会との共感、共通価値の創造

説明できなければ社会的容認が得られず、信頼のない企業は持続できないとされます。また企業の意思決定を判断する利害関係者側である消費者の社会的責任(consumer social responsibility)、市民の社会的責任(citizen social responsibility)も必要不可欠となるといわれています。

特に成熟化した我が国の様な社会に於いては高度成長期に見られるステークホルダー全てに得な「富の分配時期」から「負担の分担時期」に移り、企業セクターと社会セクター、行政セクターや研究者セクターなどの協業の時代に入りました。

近年はCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)という概念がマイケル・E・ポーターにより提唱されています。これは企業が追求する経済的価値(利益)と社会的価値を同時に実現することを目指すものです。ここでは特に細かな概念分類をするものではなく、広くCSRに包含した概念として事業戦略にまで対応したCSRとして位置づけることとします。

こうした時代には企業のCSRや研究機関のアウトリーチプログラム、そして行政サービスやソーシャル活動、コミュニティ活動が異分野連携することで新たなスキームを形成することになります。そのために企業活動に社会との同じ目標、そして共感する活動やメッセージがその集合体形成の絆を導きだすことにもなります。

■CSR活動の色付け(細分化)

CSRの考え方を社会の認識や活動のカテゴリーで分類し、より活動の中心や社会へのメッセージを明快にするために「環境CSR」「教育CSR」「健康医療CSR」「コミュニティまちづくりCSR」「防災災害支援CSR」「平和安全安心CSR」「文化芸術CSR」などのようにCSR活動に色付けをすることを行います。

こうしたことにより、企業のCSR活動を社会に明確化し、メッセージ性を高め、複数の異分野が活動の連携や協業を容易に行える環境を整えます。また1社ではメッセージ価値の低い活動を1つの運動体として論理構築することも含め社会の課題や要求に具体的な企業活動がどのように存在するかの説明責任を効果的に実施できることとなります。